
1. 生活オリエンテーションとは
生活オリエンテーションとは、特定技能所属機関(受入れ企業)または登録支援機関が、初めて日本で生活する特定技能外国人に対し、日本での生活を円滑に開始・継続できるように実施する必須の支援項目です。
これは、単に手続きを説明するだけでなく、異文化の中で生活を始める外国人にとって、不安を取り除き、自立した生活を送るための基盤を築くための重要な機会となります。このオリエンテーションを通じて、彼らが日本のルールやマナー、生活習慣を理解し、職場だけでなく地域社会にも溶け込めるようにサポートすることを目的としています。
この支援は、特定技能外国人が日本に入国した後、または在留資格を変更した後、遅滞なく実施しなければならないとされています。
2. 生活オリエンテーションではどんなことをするのか
生活オリエンテーションで提供すべき情報は、日本で生活していくための情報です。運用要領によると、以下の項目に関する情報提供が必須となっています。
(ア) 金融機関の利用方法
金融機関における入出金・振込等の方法、利用可能な時間やATMの使い方等日常における利用方法から、出国する場合に、自己名義の銀行口座が不要となるときは、口座を閉鎖する手続を行う必要があること、将来再び入国するときのために口座を継続して利用する希望がある場合には、出国前に銀行に相談しなければいけないことなどを伝えます。
(イ) 医療機関の利用方法等
症状に応じてどの医療機関が利用可能になるのか、医療機関での受診方法や保険証の必要性等を説明します。また、アレルギー・宗教上の理由により治療に制限がある場合は、医療機関にきちんと伝える必要があることもガイダンスの中で伝えます。
(ウ) 交通ルール等
歩行者は右側通行、車両は左側通行・歩行者優先であることや、自転車を運転する場合は自転車損害賠償責任保険への加入ができること、自動車、バイク等を運転する場合は運転免許が必要であることなど基本的な日本の交通ルールをガイダンスの中で伝えます。
(エ) 公共交通機関の利用方法
就労・生活する地域の公共交通機関(通勤に最適な公共交通機関)及びその利用方法や、勤務先までの経路及び所要時間、通勤定期又は切符の購入・利用方法、ICカードの購入・利用方法等について伝えます。
(オ) 生活ルール・マナー
就労・生活する地域におけるゴミの廃棄方法(分別・出し方、収集日、粗大ゴミの捨て方等)や、日本における喫煙ルールについて伝えます。また、夜中に騒いだり空き地や畑に無断で入ったりしないよう、近隣住民への迷惑行為についてもガイダンスの中で教えていきます。
(カ) 生活必需品等の購入方法
就労・生活する地域のスーパーマーケット、コンビニエンスストア、ドラッグストア、家電量販店などがどこにあるのかを伝えます。
(キ) 気象情報や災害時に行政等から提供される災害情報の入手方法
日々の気象情報の入手方法や、災害情報に関するホームページ、アプリの使い方を教えます。また、出身国別の外国人向けのコミュニティサイトもあるので、災害時にはそれらを活用できることについても伝えます。
(ク) 我が国で違法となる行為の例
違法行為を防ぐため、日本における犯罪行為を伝えます。例えば、原則として、銃砲刀剣類の所持が禁止されていることや、大麻、覚醒剤等違法薬物の所持等は犯罪であること、在留時の注意点として在留カードの不携帯は犯罪であることや、在留カード、健康保険証等を貸し借りすることは禁止されていること等具体例を挙げて外国人がわかるように伝えていきます。
(ケ) 出産・子育てに関する制度
日本での出産・子育てに関する情報も共有します。母子健康手帳の交付、産前産後休業、育児休業等の制度が使えることを教えておきます。
出入国在留管理庁でも、生活オリエンテーション動画を公開しており、全部で16か国語ものバージョンがそろっていますので、オリエンテーションの対象となる特定技能外国人に対する、母国語でのオリエンテーション実施にも役立てることができます。ただ、動画だけでは伝わりづらい点や、動画には含まれていなくても必要な情報はあるので、オリエンテーションの内容はしっかり計画を立てて、実施する必要があります。
3. 生活オリエンテーションは何時間実施したらよいのか
上記の内容について、特定技能外国人にしっかりと理解してもらうために、生活オリエンテーションについては、最低でも8時間以上の実施が求められています。ただし、技能実習2号からの移行や、留学生の在留資格切り替え等によって、同一機関での雇用が継続される場合には、生活オリエンテーションは4時間程度の実施でも問題ないとされています。これは、外国人の生活環境が大きく変わらないためです。
反対に、別の企業で働いていた特定技能外国人を受け入れる場合には、外国人の生活環境が変化すると考えられるため、初めて日本に来る外国人と同様に8時間以上の生活オリエンテーションを実施する必要があります。
4. 生活オリエンテーションを実施する場合の注意点
生活オリエンテーションを実施するうえでの注意点は以下の点です。
(ア) 外国人が十分に理解可能な言語での実施
生活オリエンテーションは、義務的支援の中でも外国人の日常生活に必要な情報提供を多く含みます。そのため外国人の方が十分に理解できる言語にて実施されることが求められます。簡易な日本語での実施も可能ですが、できるだけ母国語での実施が可能な環境を整えましょう
(イ) 質問を受けられる体制の整備
生活オリエンテーションを実施するうえで、基本的な情報提供を動画配信やオンライン面談等で実施することも可能です。しかし非対面による実施であっても、ガイダンスを受ける中での疑問点を解消できる環境が整っていることが必要不可欠です。
(ウ) 転職時には再度オリエンテーションが必要
前段にも記載していますが、別の企業で働いていた特定技能外国人を受け入れる場合には、再度オリエンテーションの実施が必要になります。この場合には日本語がある程度理解できると想定されるので、母国語での実施は必須ではありませんが、ガイダンスの実施時間については最低8時間以上が必要になります。
5. 登録支援機関とは
登録支援機関は、特定技能所属機関が本来実施するべき特定技能外国人に対する義務的支援業務を代わりに実施することができる機関です。特定技能所属機関からの委託をもって、支援業務の一部又は全部を対応することができます。
上記の生活オリエンテーションについても、特定技能所属機関での実施が難しい場合には、登録支援機関に業務を委託することができます。特に、外国語での対応等については企業側での対応が難しい場合も多くありますが、登録支援機関では外国人スタッフがいる場合も多くありますので、スムーズなガイダンスの実施が想定できます。
登録支援機関に支援を委託する際の費用としては、特定技能外国人1人当たり約2万円~3万円程度になるため、支援する外国人の人数が増えれば増えるほど、登録支援機関事業としての収益性は高まります。
6. 登録支援機関に関してお悩みのある方はぜひご相談ください
現在の支援機関への委託をやめたい、自社で支援機関を運営したいと考えても、登録支援機関の設立・運営には、専門的な知識と実務経験が不可欠です。当事務所は、行政書士としての専門性と、実際に登録支援機関である株式会社KMTを運営している経験の両方を活かし、お客様を多角的にサポートします。
主なサポート内容は以下の通りです。
(ア) 登録支援機関設立のための申請サポート
申請に必要な書類の作成から、厳格な審査基準を満たすための体制構築まで、確実な手続きをサポートします。
(イ) 最新の制度情報や法改正情報の発信
頻繁に変わる特定技能制度の法改正や運用方針を常に把握し、お客様の事業運営がリスクなく行えるよう、最新の情報に基づいた助言を行います。
(ウ) 実務に即したアドバイス
支援業務の進め方、定期報告の義務、予期せぬトラブルへの対処法など、実務で直面する課題について具体的なアドバイスを提供します。
専門的な知識と豊富な実務経験を持つ当事務所が、お客様の円滑な事業運営を力強くサポートします。ご興味がございましたら、お気軽にご相談ください。
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