
特定技能制度に関する最新動向
特定技能制度は、制度自体が新しいこともあり、いまだ改正が多くなされています。令和6年では、特定産業分野の新規分野として「自動車運送業」「鉄道」「木材産業」「林業」も追加になり多くの事業所が興味・関心を強く持っている分野です。
制度改正の動きとして、製造業をメインとする特定産業分野の名称が「工業製品製造業」に変更となったのも、技能実習生を雇用している企業にとっては大きな動きだったと思います。
今回は特定技能制度の最新動向と繊維業追加に伴って、企業への提案を行う際に登録支援機関が注意すべきポイントについて解説いたします。
製造業における名称変更
令和6年3月の閣議決定によって、特定技能制度に関する変更が行われました。特定技能の対象分野として、「自動車運送業」、「鉄道」、「林業」、「木材産業」の4分野が新たに追加された他、従来「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」と呼ばれていた分野は名称が変更され、「工業製品製造業」となりました。
名称変更によって設定された新規の業務区分
工業製品製造業分野では名称変更に伴って、新たに「紙器・段ボール箱製造」「コンクリート製品製造」「陶磁器製品製造」「紡織製品製造」「縫製」「RPF製造」「印刷・製本」の7業務区分が追加されました。これにより、より多くの事業所で、特定技能外国人の受け入れが可能となっています。
この「縫製」にあたる分野が、技能実習制度における職種の「衣類関係」に該当する繊維業です。繊維業においては、海外現地に現地法人を抱えている日系企業も多く、技能実習制度を活用されている企業も多くいます。
技能実習制度の廃止が決まった際には特定産業分野には該当していない業種だったため、外国人材の雇用について不安を持たれた企業も少なくありませんでした。
今回の業務区分変更は、企業においても興味・関心を強く持たれている分野です。
技能実習制度における繊維業の扱い
技能実習制度においては「繊維・衣服分野」として分類をされています。技能実習の対象職種としては紡績運転、織布運転、染色、ニット製品製造、たて編ニット生地製造、婦人子供服製造、紳士服製造、下着類製造、寝具製作、カーペット製造、帆布製品製造、布はく縫製、座席シート縫製の計13職種が指定されており、ここからさらに22の作業に分類されています。
技能実習制度においては職種・作業が詳細に決められている点が、特定技能制度との違いともいえます。特定技能に繊維業が対象となることで、技能実習生よりもより広い業務に従事してもらえることができる点があります。技能実習制度において、繊維業はかねてより多くの技能実習生を受け入れてきました。これにより、繊維業に関する技能・技術・知識を外国へ移転させることが可能となっています。一方で、技能実習生の時間外労働への支払い不足なども問題とされてきました。
育成就労制度との連動
技能実習制度に代わり新たに設けられる育成就労制度は、人手不足の分野における人材育成と人材確保を目的としています。育成就労制度においては、受け入れた外国人を3年で一定の専門性を持つ「特定技能」の水準まで引き上げることとしており、特定技能への移行を見据えて、より長く日本で働いてもらえるような制度設計となっています。受け入れ企業は、特定技能だけでなくこの育成就労制度も活用し、人材確保をより効率的に行うことを検討される先が多いといえます。
そのため、特定技能を取り扱うなかでは育成就労制度に関する動きもキャッチアップしておくことがポイントです。
繊維業の追加に伴う特定技能受入れにおける要件
特定技能分野に繊維業が追加されたことに伴って変更がなされた、特定技能の受け入れにおける外国人側、企業側それぞれの要件について解説します。登録支援機関の運営にあたっては、これらを踏まえて、企業に対して適切な営業を行うことが重要です。
外国人側の要件
外国人側の要件は、対象となる技能試験及び日本語能力試験(N4以上)に合格することです。もしくは、技能実習2号の移行対象職種において、約3年間の実習期間を良好に修了した場合は、試験が免除され、特定技能の在留資格を得ることが可能となります。
企業側の要件
従来の繊維業における技能実習生の実態等を踏まえて、繊維業における企業側の受け入れ要件は、より厳しくなっています。具体的には、企業は以下の8つの要件を満たす必要があります。
<既存の要件>
①派遣契約ではないこと
②受け入れ企業の産業分野(日本標準産業分類で限定)
③特定技能の「受け入れ協議・連絡会」の構成員であること
④経産省、協議・連絡会の指導、報告撤収等に協力すること
<追加された要件>
①国際的な人権基準を遵守し事業を行っていること
②勤怠管理を電子化していること
③パートナーシップ構築宣言を実施していること
④特定技能外国人の給与を月給制とすること
追加要件では、月給制とすることも明示されています。これにより、特定技能外国人の収入を安定させることができ、安心して働ける環境に繋がります。
技能実習制度における課題を反映した要件となっているため、繊維業において追加されている要件を満たすための体制整備まで関与をしていくことが重要です。
繊維業に向けて登録支援機関が営業する際のポイント
以上のように、新たに特定技能外国人の受け入れが可能となった繊維業に向けて、登録支援機関が営業を行う際はどのようなことを意識すべきでしょうか。ここでは、その詳細について解説すると共に、営業を成功させるためのポイントをお伝えいたします。
①技能実習制度との連携を踏まえた提案を行う
特定技能外国人を受け入れるにあたって、技能実習制度との連携を踏まえた提案を行うことが重要です。現在技能実習生を受け入れている企業が多いことから、技能実習からの変更を見据えたうえでどのような流れになるかを含めた営業が重要になります。登録支援機関は、企業の人材採用に関する負担を軽減するため、受け入れや人材確保のサポートをすることが可能であることを強調していくことがポイントです。また育成就労へ制度が変更になったタイミングでも、特定技能との連動性をお伝えすることで、他の登録支援機関との差別化にも繋げていくことができます。
②特定技能に関する制度のメリットを訴求する
上記の業務区分でもお伝えをした通り、技能実習生を雇用することとの違い・比較を行うことがポイントになります。技能実習生の場合には、技能実習計画に基づいて作業ベースにて細かく業務内容の制限が設けられていることが大きな違いです。特定技能への移行を行うことによって、1人の外国人材が対応できる業務範囲の幅が広がり、結果として自社の採用人数や従業員数の生産性向上にも繋げていくことができます。特定技能からの移行を踏まえて、制度上のメリット訴求を行った営業を実施していくことが求められます。
③協議会への加入についてもサポートも言及する
特定技能外国人を受け入れる場合、企業は業界に応じた協議会に加入する義務があります。登録支援機関は、協議会加入の手続きや、それに伴う必要書類の準備のサポートなども一貫して行えることを強調し、企業との信頼関係を築くことが重要となります。
登録支援機関では、在留資格申請に関する書類作成業務については認められていません。そのため、協議会への加入と在留資格申請業務については、信頼できる専門家と連携をしていくことをおすすめします。
登録支援機関における企業開拓にお悩みの方は当事務所にご相談ください
当事務所は、行政書士法人の他に、登録支援機関としての役割も持つ株式会社KMTを運営しています。そのため、在留資格の申請手続きに留まらず、登録支援機関様に向けて、実務に即したアドバイスを行うことが可能です。登録支援機関を設立予定の方、登録支援機関を設立したものの、企業への営業を始めとした運営面でお悩みの方は、是非ご相談ください。