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分野と国籍の相性とは?行政書士が解説

  • 2024年5月8日

カンボジアとの相性

カンボジア人はたったの4600人

前回は「分野と国」の選定において重要となるポイントをお伝えしましたが、今回は具体例を用いた「相性」のお話です。

令和5年12月時点の特定技能在留者数は、4664人(全体6番、全体2.2%)となっております。

11万人いるベトナム人比べると非常に少ないのがわかります。 

考えられる理由としては以下の3つが挙げられます 。

1. 元技能実習生の少なさ 

2. 特定技能分野との相性 

3. 日本語能力

 

なぜカンボジア人は少ない?

まず1つ目の「元技能実習生の少なさ」ですが、令和3年度のカンボジア人の技能実習計画認定数は6,505件と、90,000件以上のベトナム人の10%にも満たない数です。 

技能実習修了者が試験免除になる特定技能制度において、技能実習生が少ないという点は圧倒的に不利(候補者確保が困難)になります。

 続いて2つ目の「特定技能分野との相性」ですが、カンボジアの元技能実習生のうち15〜20%ほどは「繊維・衣服関係」の実習をしており、 特定技能での受け入れができない分野で働いていたことになります。元実習生自体が少ない中、更に候補者が限られてしまいます。 

最後にカンボジア人の「日本語能力」に関してです。 

カンボジア人は全体的に日本語能力の低い方が多く、日本企業の求める日本語レベルに達していないために採用に至らないケースが非常に多いです。

 元技能実習生であっても他国に比べて日本語能力が低い要因としては、母国帰国後の就職ルートの少なさや、基礎教育レベルの低さが考えられます。 そのため、「日本語力を求められる分野」との相性はあまり良くありません。(外食業等) 

カンボジア人と相性の良い分野は?

ここまで、カンボジア人の特定技能在留者数が少ない要因を挙げてまいりましたが、全体数が少ない中でも相性の良い分野は、 

【元技能実習生が多く、日本語能力をそこまで求められない分野】

と言えるかと思います。

具体的には、【農業】や【建設業】です。

ただし、元技能実習生の総数自体は少ないので、カンボジア人一本での運営は厳しいと言えるでしょう。

私は2012年から2018年までの間、カンボジアのシェムリアップに在住しておりました。 

その影響もあり、私が運営する登録支援機関(株式会社KMT)は、特定技能開始と同時にカンボジアの方をメインターゲットとして登録支援機関事業を開始しました。 

これから繊維業が入ることで、カンボジア人の特定技能受け入れは少しずつ増える!かもしれません。

ベトナムとの相性

圧倒的なシェアを誇る国「ベトナム」

令和5年12月時点の特定技能在留者数は、約110,000人と、2位のインドネシア(約34,000人)と比べても圧倒的なシェアがあることがわかります。

 理由としては以下の点が挙げられます。

1. 元技能実習生の数 

2. 留学生の数

 

ベトナム人技能実習生は20万人以上

まず1つ目の「元技能実習生の数」に関してですが、令和5年12月時点のベトナム人技能実習生の数は約200,000人で、全体の50%を占めています。

元技能実習生が多いということは、試験免除で移行できる分野(業務区分)において、「候補者の確保がしやすい」ということになります。

外国人を受け入れる企業としても、多国籍で増やしていくより、従業員同士の関係性などを考慮し同国籍で採用を進めることが多い傾向にあります。

 

留学生数は中国に次ぎ2番目

続いて2つ目の「留学生の数」に関してですが、令和4年5月時点で約37,000人が在留しており、中国に続いて全体2番目の数字になります。 

入管の審査スピードなどの影響を受け、入国(入社)までのスケジュールを組みづらい国外からの採用に比べ、国内に在留している留学生は採用スケジュールを立てやすく、国内採用を希望する企業が多いため、留学生の需要が高まっています。

また、【外食】など、高い日本語能力を求められる分野や、国外での試験が限定的になっている分野での採用は、留学生に頼らざるをえないため、母数の多いベトナム人を紹介するエージェントが多く存在します。

先日、ベトナム国内での特定技能試験に関する情報もアップされ、農業、宿泊、自動車整備、介護の試験が決定しており、今後さらに増加する見込みです。 

一方で、円安による出稼ぎ国としての日本の魅力低下や、ベトナムの国内経済の発展、一部のベトナム人による日本国内での犯罪行為など、さまざまな課題を抱えていることも事実です。 

それでも真面目で勤勉なベトナム人も非常に多く、特定技能候補者確保には必須の国籍であることは間違いありません。 

 

ミャンマーとの相性

期待と不安が入り混じる「ミャンマー」

令和5年12月時点の特定技能在留者数は、約11,873人(全体5番、全体の5.7%)、11万人いるベトナム人に比べるとまだまだ少ないのが現状です。

しかし、今後特定技能外国人の数が急激に増える見込みのある国籍がミャンマーです。 

理由としては以下の点が挙げられます。 

1. ミャンマーの情勢 

2. 日本国内の深刻な介護人材不足 

 

出国を希望するミャンマーの若者たち

まず1つ目の「ミャンマーの情勢」に関してですが、2021年2月1日から現在まで国軍クーデターが続いており、ミャンマーは深刻な人権侵害と人道的危機に陥っており、自国を離れたいと考えるミャンマー人の方が多く存在します。

また、日本国政府が「緊急避難措置」として、ミャンマー人の方の在留や就労が特例で認められる措置をとっています。その結果、昨年の6月末から12月末までの特定技能外国人の増加数はベトナム、インドネシアに次ぎ3番目であり、今後も多くのミャンマー人の日本入国が見込まれます。

 

介護分野でのミャンマー人需要

続いて2つ目の「日本国内の深刻な介護人材不足」に関してですが、介護職は賃金が低く、労働環境が過酷であることが多く、介護職への就職を希望する人が少なくなっています。

ミャンマーでは「介護業」の特定技能試験が実施されており、介護評価試験と介護日本語評価試験において高水準の合格率を記録しています。

そして、ミャンマーの賃金水準はアジアの中でも最低水準で、仕事の探しやすさや、環境の安全面において優位性のある日本での出稼ぎを希望するミャンマー人も増えており、今後、介護業での特定技能外国人が更に増加すると予想されます。 

この他にも、ミャンマー人の方の特徴として、90%の方が仏教徒で「慈悲深く、目上の人を大切にする」、「徳を積む」といった特徴があり、周りの人を大切にする風習があります。

介護技能評価試験と介護日本語評価試験の合格率や、日本語能力試験の受験者数が中国に次いで2番目に多いというデータが示しているように、「勤勉さ」という部分も大きな特徴です。

さらに、日本がこれまで多額のODA(政府開発援助)を行なっていることや、日本文化の浸透により、親日の方も多いです。 

日本語能力が必要とされる「外食業」、人手不足が深刻な「農業」や「建設業」の特定技能評価試験も現地で行われており、これらの分野への紹介国籍として、今後ミャンマーは必須の存在になると思われます。

*ミャンマー人の方が日本で働く際には「スマートカード」というIDカードの発行が必須となり、ミャンマー労働省への申請が必要です。申請してから発行までには3〜4ヶ月かかるため、特定技能の在留資格の申請のタイミングを調整するなど、注意が必要です。

 

インドネシアとの相性

今、最も勢いのある国「インドネシア」

令和5年12月時点の特定技能在留者数は、約34,255人(全体2名、全体の16.4%)、11万人いるベトナム人に比べるとまだまだ少ないですが、 増加率が高く、毎年人数が増えていっています。

インドネシアは人口は世界第4位の2.7億人、平均年齢は29歳と現在最も勢いのあるアジアの国と言っても過言ではありません。

経済的な理由や親日的な文化背景から、多くのインドネシア人が日本での就労を希望しています。 

インドネシアの方が特定技能との相性が良い理由としては、以下の点が挙げられます。 

1. 元技能実習生が多い 

2. 現地で行われている試験が多い

 

技能実習分野との相性◎

まず、1つ目の「元技能実習生が多い」に関してですが、インドネシア人の多くが日本での技能実習経験を持ち、日本での職務や文化への理解があります。

また、技能実習分野から特定技能へ切り替えられる職種も多いので、そういった意味で、特定技能への切り替えがしやすいといったメリットがあります。 

特に建設分野は、インドネシア人元実習生の数も多く、非常に評判も良いです。

試験分野との相性◎

続いて、2つ目の「現地で行われている試験との相性」に関して、インドネシアでは介護や農業など、日本で特に人手が不足している分野の特定技能評価試験が実施されています。

現地で試験を受け、日本での特定技能としての就労が可能となるため、さまざまな分野での需要に応えることができ、まとまった人数での採用が必要な場合でも、現地の送り出し機関を通して候補者を容易に確保できおます。

宗教上の注意点

最後に、雇用される際の注意点として、インドネシアはイスラム圏であるため、宗教的な配慮が必要です。 

例えば、食品製造業での肉処理に関する作業は、イスラム教の戒律に従う必要があり、ハラルの基準を満たさない作業には向いていない場合があります。 

また、普段の生活では1日5回のお祈りが必要であったり、豚肉やアルコール類が禁止されていることにも配慮が必要です。 

採用されるインドネシア人の方の「許容範囲」をしっかりと把握されることをお勧めいたします。 

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