
特定技能外国人を支援する登録支援機関が、業務における各種変更を実施する際には、国により変更内容の届出が義務付けられています。その内容は非常に細かく、提出期限が短期間に設定されている上に、届け出なかった場合のペナルティが重いのが特徴です。
○登録支援機関が行うべき届出
○届出が必要な変更内容と届出のタイミング
○随時届出を行う際のポイント
以上について、専門用語はなるべく使わずシンプルに解説します。法人・個人事業主を問わず、特定技能外国人を支援する業務に従事する方は、ぜひ参考にしてください。
登録支援機関が行うべき届出
登録支援機関は「特定技能外国人支援計画」に基づいて、特定技能外国人を支援しなければなりません。支援内容は以下のように、きわめて多岐に渡ります。
○入国前の事前ガイダンス
○出入国時の送迎
○ライフライン確保における契約支援(住居契約など)
○日本での生活全般に関するオリエンテーション
○市役所などでの公的手続き時の随行
○特定技能外国人が日本語を学習する機会の提供
○各種相談・定期的な面談・日本人との交流の促進
上記支援を滞りなく遂行するためには、支援計画書の作成と支援責任者(担当者)の選任が必要になるのは、言うまでもないでしょう。
特定技能外国人を受け入れる特定技能所属機関には、出入国管理及び難民認定法(いわゆる「入管法」)により、登録事項や支援の実施状況などについて、以下の2つの届出を提出する義務があります。
○定期届出
○随時届出
いずれにおいても、届出を提出しなかったり虚偽の届出を提出したりといった行為は厳禁です。登録の取り消し対象になります。
定期届出
定期届出とは、四半期ごとに翌四半期の初日から起算して14日以内の提出が義務付けられている届出を指します。入管法により定められた四半期の区切りは、以下の通りです。
○第1四半期:1月1日~3月31日
○第2四半期:4月1日~6月30日
○第3四半期:7月1日~9月30日
○第4四半期:10月1日~12月31日
支援業務に特段の変更がない場合でも、年に4回の届出提出が義務付けられているのです。
○契約期間
○労働時間
○社会保険や労働保険の加入状況
○休日
○賃金
○健康診断
以上のような雇用契約全般の適格性について、入管の厳しいチェックが入ります。適用項目に応じて、提出すべき届出書も多彩です。以下にその一例を紹介します。
届出書名 | 参考様式(※) | 適用項目 |
受入れ状況に係る届出書 | 第3-6号 | 受入れ状況や活動状況など |
支援実施状況に係る届出書 | 第3-7号 | 支援実施状況など |
活動状況に係る届出書 | 第3-8号 | 報酬の支払状況・離職者数・各種保険の加入状況など |
※参考様式とは:インターネットから文書(書式)をPDF形式でダウンロードする際の目安となる、文書ごとに割り当てられた番号のこと
随時届出
随時届出とは、業務において何らかの変更事由が発生してから起算して、14日以内の提出が義務付けられている届出です。変更事由にはさまざまな事項が含まれるので、以下に詳しく解説します。
届出が必要な変更内容と届出のタイミング
○事業者の氏名または事業名
○事業所の住所
○代表者の氏名
○事務所の所在地
○支援業務の内容および実施方法
○支援業務を開始する予定年月日
○特定技能外国人からの相談に応じる体制の概要
登録支援機関として活動している事業者に以上のような変更が発生した場合は、その旨を文書として提出しなければなりません。提出先は事業者の本社を管轄する地方出入国在留管理局で、提出期限は変更が発生した日から起算して14日以内です。
○インターネット(出入国在留管理庁電子届出システム)
○窓口(地方出入国在留管理官署)
○郵送(窓口と同じ官署)
以上3つの提出方法が用意されています。
変更内容①:事業者の氏名または事業名
事業者の氏名もしくは事業名が変わった場合、登録支援機関概要書の届出対象になります。
具体的なイメージ
○事業者の氏名のみ変わる場合
○事業者の事業名のみ変わる場合
○事業者の氏名と事業名の両方が変わる場合
具体的なイメージとしては、以上3点が挙げられるでしょう。
登録支援機関概要書には、該当する変更部分のみを記載すればOKです。氏名と事業者の名前が同時に変わる場合は、その旨を届出書の変更事項欄および登録支援機関概要書に記載しなければなりません。
添付書類
必要な添付書類は以下の通りです。
法人 | 個人事業主 | 共通 |
登記事項証明書 | 住民票の写し 変更後の屋号が記載された書類 |
登録支援機関概要書 |
変更内容②:事業所の住所
事業所の住所が変わった場合も、届出の対象になります。
具体的なイメージ
○郵便番号または電話番号が変わる場合
○事業所の住所のみ変わる場合
○支援業務を実施する「事務所」の所在地も同時に変わる場合
具体的なイメージとしては、以上3点が挙げられるでしょう。
郵便番号や電話番号が変わる場合、変更事項を「住所」として届け出なければなりません。この場合、添付書類は不要です。「事業所の住所変更」から「電話番号の変更」はイメージしにくい項目なので、特に気を付けてください。
支援業務を行う「事務所」の所在地も同時に変わる場合、届出書の変更事項欄と登録支援機関概要書の両方に、その旨を記載しなければなりません。登録支援機関概要書には、該当する変更部分のみを記載すればOKです。
添付書類
必要な添付書類は以下の通りです。
法人 | 個人事業主 | 共通 |
登記事項証明書 | 住民票の写し | 登録支援機関概要書 |
内容③:代表者の氏名
代表者の氏名が変わった場合も、届出の対象になります。
具体的なイメージ
登録支援機関概要書には、変更後の代表者の氏名のみを記載すればOKです。
添付書類
必要な添付書類は以下の通りです。
○登録支援機関概要書
○登記事項証明書
○住民票の写し
変更内容④:事務所の所在地
支援業務を実施する事務所の所在地が変わった場合も、届出の対象になります。
具体的なイメージ
○事務所の名称を変更する場合(A)
○登録支援機関の住所も同時に変更になる場合(B)
○登録支援機関の名称も同時に変更になる場合(C)
具体的なイメージとしては、以上3点が挙げられるでしょう。届け出が少し複雑になるので、どのようにして届け出ればよいのか、ケースごとに以下に簡単にまとめます。
○A:変更事項を「支援業務を実施する事務所の所在地」として届け出る
○BとC:変更事項欄および登録支援機関概要書に記載し届け出る
登録支援機関概要書には、該当する変更部分のみを記載すればOKです。
添付書類
必要な添付書類は、登録支援機関概要書のみです。
変更内容⑤:支援業務の内容および実施方法
支援業務の内容および実施方法が変わった場合も、届出の対象になります。実施方法は自社運営から委託運営へと運営主体を変更した場合や、従来の委託先から新しい委託先へと運営主体を変更する場合も含まれる点には注意してください。
具体的なイメージ
登録支援機関概要書には、支援業務において該当する変更部分のみ記載すればOKです。
添付書類
必要な添付書類は、登録支援機関概要書のみです。
変更内容⑥:支援業務を開始する予定年月日
支援業務を開始する予定年月日が変わった場合も、届出の対象になります。
具体的なイメージ
具体的なイメージとして、登録申請時に申請書に記載した予定年月日より、業務開始が早まる場合と遅延する場合を想定するとよいでしょう。予定年月日から1日でもずれる場合には、届出が必要なのです。
添付書類
必要な添付書類は、特にありません。
変更内容⑦:特定技能外国人からの相談に応じる体制の概要
特定技能外国人からの相談に応じる体制の概要が変わった場合も、届出の対象になります。
具体的なイメージ
具体的には、対応可能言語を追加したり削除したりする場合に届出が必要になるとイメージしておけばよいでしょう。登録支援機関概要書には、該当する変更部分のみを記載すればOKです。
添付書類
必要な添付書類は、登録支援機関概要書のみです。
随時届出を行う際のポイント
○届出が必要な変更内容を把握する
○届出資料を正確に記載する
○不安がある時は専門家に相談する
以上3つが、随時届出を行う際のポイントになります。
届出が必要な変更内容を把握する
届出が必要な変更内容を正確に把握することは重要です。内容が細かいので、留意点と併せてもう一度以下に簡単にまとめます。
適用項目 | 留意点 |
事業者の氏名または事業名 | いずれかのみが変わるのか、両方とも変わるのか |
事業所の住所 | 事業所の住所のみ変わるのか、業務を実施する事務所の所在地も変わるのか
郵便番号や電話番号が変わる場合も届出が必要 |
代表者の氏名 | 特になし |
事務所の所在地 | 事務所の名称を変更するのか、住所も同時に変更するのか、登録支援機関の名称も同時に変更するのか |
支援業務の内容および実施方法 | 自社運営から委託運営へ変更する場合だけでなく、委託先を変更する際にも届出が必要 |
支援業務を開始する予定年月日 | 予定より早まっても遅くなっても届出が必要 |
特定技能外国人からの相談に応じる体制の概要 | 対応可能言語を追加する場合と削除する場合のいずれにおいても届出が必要 |
届出資料を正確に記載する
当然ながら、届出資料には必要事項を正確に記載しなければなりません。
○記載漏れがないか
○署名(自署)が必要な項目なのに、誤って印字をしていないか
○届出者が「特定技能所属機関」になっているか(「登録支援機関」になっていないか)
資料を提出する際に頻発する不備(ミス)は、以上3つです。提出前に確認する際の、参考にしてください。
不安がある時は専門家に相談する
ここまで解説した通り、登録支援機関の各種変更に伴い必要となる届出は複雑多岐に渡ります。日本にやって来る特定技能外国人にとっても、これらの届出が正確になされているかどうかは、職場選定における重要な指標のひとつになるでしょう。
つまり、よりよい人材を募集し定着させる上で、正確かつ迅速な届出の提出は必須なのです。
しかし、届出のディテールが広範囲なので把握しきない上に短期間での提出を求められるので、届出を適切に提出できずペナルティの対象になるケースが少なくありません。健全な事業活動のためにも、不安がある時は専門家に相談することをおすすめします。